ロープウェイ、ゴンドラやリフトの搬器がぶら下がっているケーブルを、どうやって作っているのか不思議になったことはありませんか?
ケーブルは輪になっていて、継ぎ目は見当たりません。
このケーブルの両端を繋げて輪にする技術をロングスプライスと呼び、どんな太いケーブルでも繋ぎ合わせる作業は人手で行っています。
まずは、作業風景をご覧ください。
ゴンドラやリフトを架けるために、こんな作業が行われているんですね。
大昔にテレビのニュースか番組で取り上げられ、数十人の職人が力を合わせてロングスプライスを行っているのをみて感動したことを覚えています。
技術の発展した現在でも、ほぼ手作業でしか行うことができないスプライス、魅入ってしまいます。
海外のスキー場では、リフトを新設する時によく紹介されているのですが、日本ではほとんど取り上げられません。
一度見れば、興味が湧くと思うのですが。(私だけかww)
スプライス
ロープやワイヤーの端を一旦ほどいて結ぶことをスプライスといい、何種類かあります。
- アイ スプライス :先端に輪っか(アイ)を作ることです。
- ショート スプライス:先端同士を結び、全体を輪にします。両端の重なりが短く(ショート)強度も維持できますが、元の太さに比べて太くなります。
- ロング スプライス :先端同士を結び、全体を輪にします。両端の重なりが長く(ロング)強度はやや落ちますが、元とほぼ同じ太さにできます。
両端の重なり | 結び目の強度 | 太さ | |
ショート スプライス | 短い | ほぼ同じ | 元より太い |
ロング スプライス | 長い | やや落ちる | 元とほぼ同じ |
ロープウェイやリフトのケーブルは、太さが変わらないようにする必要があるので、ロングスプライスが用いられます。
作業によりケーブルの強度に差が出るので、高度な熟練の技が必要とされるそうです。
国家検定のロープ加工技能士の実技試験にもスプライスは含まれています。
作業手順
ロングスプライス自体の作業手順は動画などで紹介されています。
しかし、ほとんどはロープを使ったもので、実際のワイヤロープを使ったものは見つけられませんでした。
索道用ワイヤーロープ作成にはノウハウが詰まっていると思われます。
大まかな作業手順
- リフトにワイヤーロープをかけ、両端を地面におろします。
- ワイヤーロープの両端をほどきストランドに分けます。
- 両端のストランドを交互に組み合わせて重ね、ワイヤーロープの長さを決めます。
- 片端のストランドを外し、その場所に反対の端のストランドを組み入れていきます。
- 4の作業を全部のストランドに対して行います。
- ストランドの端を処理して終わりです。
言葉では、分からないと思いますので、上の動画をご確認ください。
索道用ワイヤロープ
創業明治20年、老舗の東京製綱株式会社が索道用ワイヤロープを製造しています。
素線と呼ばれる1本1本の線を編みストランドを作ります。
6本のストランドを繊維でできた芯の周りに巻き付け、ワイヤロープが出来上がります。
スプライスは、ワイヤロープの両端のストランドをほどき、そして両端を編み込む作業となります。
東京製綱株式会社 HPより
東京製綱株式会社
東洋初のロープメーカーで、一世紀を超える伝統と世界に誇る技術と設備を有しています。
創業 :明治20年4月1日
従業員:約1,700名(連結ベース:平成30年3月末)
市場 :東証プライム
最後に
ゴンドラのケーブルのような大きな荷重のかかるロングスプライスを行える職人は多くはいないそうです。
2021年夏、ニセコHANAZONOリゾートのゴンドラやリフトのケーブルが新しくなりましたが、ヨーロッパから技術者を呼んでロングスプライスを行っています。
ニセコHANAZONOリゾート
・HANAZONOシンフォニーゴンドラ(POMA製)、新設
・HANAZONO第1リフト、架け替え
今年も、山形県湯殿山スキー場の新第二ロマンスリフトや長野県白馬乗鞍温泉スキー場のアルプス第11ペアリフトでロングスプライスが行われています。
日本でも、もっとアピールしてほしいと思うのは私だけでしょうか。
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