近年、盛んになってきているバックカントリー スキー・スノーボード。
楽しい反面、危険との隣り合わせで、毎年痛ましい事故が発生しています。
そのようなニュースを見ているとき、不正確な言葉が使われ、あたかもスキー場が悪いととれるような表現に出くわします。
言葉を正確に理解していただき、正しく状況を把握できるように用語をまとめました。
また、ブームに乗っかり軽い気持ちでバックカントリーに入ることは危険を伴います。
救助費用がどれだけかかるか共有しますので、雪山にはしっかりとした準備をして入山するようにしてください。
夏山
雪山を説明する前に、スポーツとして歴史の長い、登山について簡単に説明します。
山の所有者
山を含め日本の土地は、国、地方自治体、企業、個人など、必ず所有者がいます。
登山道にも所有者がいて、登山をするという事は誰かの土地の上を歩くことになります。
ちなみに、昭和四十九年の最高裁判決により、富士山の八合目から山頂の土地は、富士山本宮浅間大社の所有ということが確定しました。
すなわち、富士山登山を行うという事は、浅間神社の所有地を通るという事になります。
一見、私有地の上を歩くことは問題であるように思えますが、山の中では立ち入りを禁止する法律はありません。
なので、だれでも登山を自由にできるのです。
ただし、私有地なので生えている松茸や自然薯をとると話は別で、人の庭にあるものを盗むことと同様に窃盗となります。
また、山でも管理をされていて、はっきりと分かるように区別をされている場所(囲いがあるなど)に侵入すると、民家に侵入すると同じように罰せられます。
夏山については、登山関係のサイトに詳しく書かれているので、ご興味のある方はお調べください。
雪山
雪山も夏山と同じで、スキー場などの管理区域を除いて、自由に移動しても良いという事になります。
しかし、雪山は夏山以上に死と隣り合わせです。
雪崩、滑落、遭難など、毎年多くの方が命を落とされています。
このような事故があった時にニュースで報道されるわけですが、「スキー場のバックカントリーで雪崩」、「〇〇スキー場外のバックカントリー」のようなスキー場とバックカントリーを結び付けようとする表現や、「〇〇スキー場のコース外」など、知らない人がみると入ってはいけない場所を滑っているような表現を見かけます。
記者の方には正しい表現を勉強していただき、誤解がおきない記事を書いてほしいと思います。
呼称
スキー場管理区域
最も明確なのが、スキー場管理区域だと思います。
スキー場が発行するゲレンデマップに、スキー場が管理している区域を明示しています。
管理区域内はスキーパトロールが巡回し、またアバランチコントロールを行い安全を確認しています。
また、この区域はスキー場の管理区域なので、スキー場の定めたルールに則って行動する必要があり、違反した場合はリフト券の没収などの処分が下されることがあります。
滑走禁止区域
スキー場管理区域内で、スキー場が滑走を禁止している区域で、雪崩の危険性が有る場所、リフト線下などが指定されています。
スキー場が滑走を禁止した区域なので、滑走者がどう考えるかに関係なく滑走することはできません。
すなわち、自己責任エリアではないということです。
自己責任エリア
スキー場管理区域内にありますが、自己責任において滑走可能なエリアです。
整備や、パトロールの行われないエリアで、ツリーランコースなどが自己責任エリアとなっています。
バックカントリー
スキー場などが管理している区域外のことです。
自己責任において、どこでも登坂、滑走することができます。
登山届(登山計画書)の提出を行うことが望ましく、一部の地域では条例で提出が義務付けられています。
スキー場管理区域外
バックカントリーとほぼ同義語です。
コース外
この言葉が、一番混乱を呼びます。
コース外とは、バックカントリーのことなのか、スキー場の定める滑走禁止区域なのか、まったく分かりません。
滑走禁止区域を滑った場合はルール違反ですが、バックカントリーを滑ること自体は問題ありません。
救助費用
救助費用は、救助される場所により異なります。
近年の救助者の増加により、費用を明示するスキー場、自治体などが増えてきました。
白馬八方尾根スキー場約款などの救助費用をみれば、どれほどの費用が掛かるか良く分かります。
キロロスノーワールド
キロロスキー場マップ(グルーミング・ツリーランエリア・管理区域外エリア)並びに管理区域外エリア救助費用
ニセコ全山
スキー場外での救助捜索には費用(最低10万円)が請求される。
奥只見丸山スキー場
六日町 八海山スキー場
提供:watanabe.GmbH さん
舞子スノーリゾート
立入禁止エリアについて
如何なる理由があっても、立ち入る事を禁止致します。
捜索・救助の要請があった場合は所定の費用請求、損害賠償費用の請求を致します。
- 捜索・救助対応チーム設置費用 30,000 円/時間
- パトロール隊員 1 名につき 20,000 円/時間
- スノーモービル 1 台につき 10,000 円/時間
( 隊員の移動・機材の運搬を含む ) - 圧雪車 1 台につき 50,000 円/時間
( 隊員の移動・機材の運搬・灯光を含む ) - その他 待機人員・食事・ヘリ要請については実費
ロッテアライリゾート
第5条 利用者の責任
4. 当社は救助終了後、捜索・救助に関係した人件費、雪上機器費用、索道運行費用、照明電気費用、その他負担経費の内容を明示して、要救助者及び関係者に支払いを求めます。
白馬コルチナスキー場
第5条 利用者の責任
4. 当社は、救助終了後、以下の単価により、捜索・救助に関係した人件費、雪上機器費用、索道運
行費用、照明電気費用、その他負担経費の内容を明示して、要救助者および関係者に支払いを求め
ます。
救助費用単価/1 時間あたり
- パトロール隊 1 名 20,000円
- 後方支援者 1 名 10,000円
- 救助本部従事者 1 名 5,000円
- 圧雪車 1 台 50,000円
- スノーモービル 1 台 10,000円
尚、上記の単価は、今後の救助費用に関する社会情勢により変更することがあります。
白馬八方尾根スキー場
第21条 当社は、バックカントリーや閉鎖区域に出て遭難した利用者(以下「遭難者」といいます。)や、遭難者の家族、友人及び知人等から、当社に捜索救助の要請があり、当社が遭難者の捜索救助活動を行った場合、遭難者に対し、次の各号の費用を請求させて頂きます。
(1)捜索救助要員 1名 20,000円(1時間あたり)
(2)後方サポート要員 1名 10,000円(1時間あたり)
(3)本部対応隊員 1名 10,000円(1時間あたり)
(4)圧雪車両 1台 50,000円(1時間あたり)
(5)スノーモービル 1台 10,000円(1時間あたり)
(6)食事代 実費
(7)その他、捜索救助状況に応じて発生した費用は別途請求
長野県野沢温泉村
(捜索救助費用の弁償)
第 11 条 スキーヤーは、第7条第1項に定められたスキー場区域に属さない区
域において発生した事故により捜索救助を受けた場合は、その費用を指定管理
者に弁償しなければならない。
株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイド運営のスキー場
苗場、かぐらなど9か所のスキー場です。
5. 賠償請求及び費用負担
(2) 当約款等に違反し、スキー場管理区域の外に出た利用者又はその知人等から当社に遭難救助の申告があったときは、当社単独又は当社と関係官公庁等が協力して救助活動を行いますが、当社は救助活動終了後、捜索・救助に要した人件費、雪上機器費用、索道運行費用、照明電気費用、その他発生した費用の一切を当該利用者に請求させていただきます。
最後に
私も新雪が大好きで、バックカントリーに行く方の気持ちは良く分かります。
経験豊富な方がしっかりとした準備を行っていても遭難などの危険性があるなかで、準備もおろそかに安易な気持ちでバックカントリーを行うのは自殺行為です。
安全に十分配慮し、経験者に同行してもらい、バックカントリーを楽しんでください。
コメント
そもそもバックカントリーなどと中途半端に英語を使うと、スキー場を知らない人にとってよけい誤解をまねく。
近年わかりやすい日本語翻訳の努力が欠けている。コロナ関連の言葉だってそうだ。何が「ソーシャルディスタンス」だ。年寄りは何の箪笥のことか?と言ってた。
もっとも「コロナカ」だって、最初なんかのお菓子の事かと思ってしまった。「コロナ禍」と文字を読んで意味が分かった。
明治期に英語を翻訳して、新たな概念の漢字熟語を作りだした人達のような努力が今必要だと感じる。
ニュースでのバックカントリーでの事故の取り扱われ方について、
以前はかなりコース外を滑るのが悪いという感じでの取り扱われ方が多かったが、
最近は多少はマシになってきている気がする。
登山届を出す、
保険に入る、
極力一人では滑らない、
ビーコン、プローブ、ショベルを持って入る
などのバックカントリー滑る上での準備についてもニュースでは積極的に案内してほしいです。
これは各社の救助隊等の費用であって警察や消防だけで救助したら費用はかからないってことでしょうか?まあ事故や遭難の規模にもよるのでしょうが。このへんのことも詳しく知りたいです。まあ今の所全くバックカントリーに興味ありませんが。
すいません。実際の救助についてはあまり知らないのですが、そもそも警察だけで救助を行うことは無いと思います。