冬季五輪新種目、山岳スキー競技 スキーモ(SkiMo:Ski Mountaineering)

スキー競技

2021年7月20日に東京で開催されたIOC総会で、国際スキー山岳連盟(ISMF)が運営するスキーモ(SkiMo: Ski Mountaineering)が、2026年ミラノ・コルティナ(Milano Cortina)冬季オリンピックに追加種目として加えることが全会一致で承認されました。
出場枠は男女各24名、国別の出場枠をかけての戦いが始まっています。

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スキーモ(SkiMo:Ski Mountaineering)

日本では馴染みのない競技ですが、スキーモは山岳パトロールがスキーを履いて山を移動することから端を発した競技で、ヨーロッパを中心に競技人口を増やしています。
雪山に設定された登り下りのあるコースで速さを競います。
ヒールフリー(踵が浮く)タイプのスキー板にシールを着け登り、ブーツを板に固定して滑り降ります。
種目によっては、板をブーツから外して背負って登る区間が設定されています。
雄大なアルプスを何日かかけて回るスキーツアーを、時間を争う競技にしたのでしょうか。

競技としては、Sprint(スプリント)、Individual(インディビデュアル)、Vertical(バーティカル)、Team(チーム)、Mixed Relay(混合リレー)があり、オリンピックではスプリント、インディビデュアル、混合リレーの3種目が行われます。 

スプリント

スプリントレースは、スキン(ヒールフリースキーでの登坂)セクション、ブート(スキーを外して登坂)セクション、そしてスキーをブーツを固定して旗門を通過するセクションから構成されています。
競技名の通り、非常に速いレースで、速い選手は約3分で全コースを完走します。
登りと下りの標高差の合計は約100mで、選手はスタートと同じ地点にゴールします。
1回戦は20秒おきに次々とスタートする個人予選で、予選終了後は6人1組のヒートで競われます。
スプリントレースは1ヒート最大6名で、通常、予選、準々決勝、準決勝、決勝が行われます。

インディビデュアル

インディビデュアルレースは最低3回の上り下りがあり、最も長い上り坂は、コース全体の標高差の50%を超えてはなりません。
また、少なくとも1区間はスキーを外して走らなければなりません。
レース時間はコースによって異なりますが、トップ選手は1時間半から2時間、最低でも標高差1,300mを完走する必要があります。

バーティカル

バーティカルレースは、スキン(シール)を使って1人で登るレースで、標高差は、男女とも500〜700mです。

チーム

チームレースは、2名のチームで行い、総標高差は2,100m以上、ゴールタイムはトップチームで3〜3.5時間です。
チームは常に一緒に走り、一緒にゴールしならず、上り坂では30秒以上、下り坂では10秒以上離れてはいけません。
チームは、すべてのチェックポイントとトランジションから一緒に出発し、互いに5秒以内にゴールしなければなりません。
様々な競技形式があります。

混合リレー

混合リレーは男女2名ずつ4名のチームで行われます。
チームのメンバーが次々と「サーキット」を実施し、各選手が1回ずつレースを行います。
1周約15分、2回の上り下りとスキーを外して走る区間を含む、スピード感のある競技です。合計の獲得高度は約150〜180mです。

 

イタリアのマドンナ・ディ・カンピーリオで行われた2021年のワールドカップ スプリントです。
新鮮で見ごたえがあります。

 

同じくインディビデュアルです。

道具

登坂時は、シールを貼ったテレマークスキー、そしてスキーをバックパックに括り付けての登坂、滑走時はヒールを固定した状態で滑ります。
タイムを競う競技なので、スキー板、ビンディング、ブーツ、そしてザックなどスキーモ専用に軽量化したものを用います。
競技人口が少ないこともありますが、道具は大変高価です。

専用ブーツの値段、2年前のが14万6千円します。

 

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オリンピックへの挑戦

オリンピックに出場するためには国別の出場枠を獲得する必要があります。
現時点では、スキーモ発祥のヨーロッパの国々が圧倒的で、日本ではこれからのスポーツです。
まずは、ワールドカップでポイントを獲得、そして入賞する選手を育てることが課題です。

ミラノ・コルティナ冬季オリンピック

2026年ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで行われるのは、次の5種目です。
男女混合リレーは4名の選手で行われることを考えると、出場枠は最大12か国ということでしょうか。

  • 男子 スプリント/インディビデュアル
  • 女子 スプリント/インディビデュアル
  • 混合リレー

出場枠:男子24名、女子24名

世界選手権、ワールドカップ

開催日 カテゴリー 競技 開催地
2022/11/25-27 WC Sprint, Mixed Relay Val Thorens, Savoie
フランス
2022/12/16 WC Sprint, Individual Pontedilegno-Tonale
イタリア
2023/1/11 WC Sprint, Individual, 
Vertical
Morgins、スイス
2023/1/21 WC Individual, Vertical Arinsal, La Massana
アンドラ
2023/2/16 WC Sprint, Individual,
Mixed Relay
Val Martello, Bolzano
イタリア
2023/2/26 世界選手権 Sprint, Individual,
Vertical, Team,
Mixed Relay
Boi Taull, Vall de Boi,
Alta Ribagorca, Pyrenees
スペイン
2023/3/17 WC Sprint, Vertical Schladming, Planai
オーストリア
2023/4/12 WC Sprint, Individual,
Vertical, Mixed Relay
Tromso、ノルウェー

日本選手権大会

2023年1月27~29日、第16回山岳スキー競技日本選手権大会が、昨年に続き富山県宇奈月スノーパークで開催されることが決まりました。
今回は、ゲレンデに併設されたコースで開催し、観客を増やし、競技人口の裾野を広げたいとのことです。

宇奈月スノーパークは、施設の老朽化、毎年数千万円の赤字が続き厳しい経営状況で、存続が危ぶまれていましたが、地元の方々の頑張りで2021/2022シーズン、市が設定した利用者数を上回り、2026年度までの存続は決定しています。
山岳スキー競技日本選手権大会を起爆剤の一つとして、利用者増を目指しています。

スプリント リザルト
順位 男子 女子
1位 島 徳太郎 田中 友里恵
2位 遠藤 健太 滝澤 空良
3位 平林 安里 上田 絢加
4位 藤川 健 古田 紗恵子
5位 星野 和昭 池田 美貴
6位 岡 秀行 臼井 夏海

第16回山岳スキー競技 日本選手権 黒部・宇奈月温泉大会結果 はこちら

日本人選手

2022/2023シーズンの強化指定選手の、2023年4月11日時点の世界ランキングです。
今までは海外でのレースにあまり参加できていないため、日本人選手の順位が塊になっています。

World Ranking Men
  •   61位 島 徳太郎(強化指定選手)
  •   80位 小寺 教夫(強化指定選手)
  •   85位 遠藤 健太(強化指定選手)
  • 111位 平林 安里(強化指定選手)
  • 121位 藤川 健 (強化指定選手)
  • 122位 松本 良介(強化指定選手)
  • 163位 山田 洋
  •     加藤 淳一(強化指定選手)
  •     宮津 旭 (強化指定選手)

U20

  • 宮下 環 (強化指定選手)
  • 笹川 慎吾(強化指定選手)
  • 駒井 夏 (強化指定選手)
World Ranking Women
  • 34位 田中 友里恵(強化指定選手)
  • 35位 上田 絢加 (強化指定選手)
  • 39位 滝沢 空良 (強化指定選手)
  • 68位 臼井 なつみ(強化指定選手)
  • 82位 古田 紗恵子(強化指定選手)
  • 83位 池田 美貴 (強化指定選手)
  •     堀部 倫子 (強化指定選手)

U20

  • 小林 華蓮(強化指定選手)

 

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統括組織

国際スキーマウンティアリング連盟:ISMF(International Ski Mountaineering Federation)

スキーモ競技の運営を司る国際組織です。
公式な名称を探せなかったので、日本語表記は異なるかもしれません。

HP 

公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)

ISMFに所属する日本の組織です。
前身は日本山岳協会で、平成29年4月に日本山岳・スポーツクライミング協会に改称しました。
山岳スキー競技と東京オリンピックで日本人が大活躍したスポーツクライミング(スピード、ボルダリング、リード)を統括しています。

HP 

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