みなさん、今よりも少しでも上手に滑れるようになりたいと思っていませんか。
「少しのことにも 先達はあらまほしき事なり」
枕草子、方丈記とならぶ日本三大随筆の一つ、徒然草にある有名な言葉で、「簡単なことでも指導者が必要」という意味です。
上手くなるためにスキー・スノーボードスクール(以下スクール)に入校したり、上手な人にアドバイスをしてもらったりすることが重要です。
私も今までに多くの方々のレッスンを受けてきました。
すべての方が真剣に教えてくださいますが、このイントラインストラクター(以下イントラ)なら誰でも上達するといったような万能な方はいません。
それは、自分の実力もありますし、またイントラとの感覚的な違いもあるからだと思います。
このコラムで、みなさんにあったレッスンやイントラを探すためのヒントを共有できればと思います。
レッスンの探し方
スキー・スノーボードのレッスンを受けたいが、どのスキー場のスクールに入るか迷っている方も多いと思います。
そんな時には、次の観点でレッスンを選ぶのはいかがでしょうか。
スキー場から選ぶ
ある程度の大きさのスキー場には必ずスクールがあります。
中規模以上のスキー場になると、複数のスクールがあるのが普通です。
SAJ公認スクールは1つのスキー場に1校という決まりがありますが、SIA公認スクールは大きなスキー場には複数校あります。
何も分からない状況であれば、まずは好きなスキー場の好きなゲレンデでレッスンを行っているスクールの常設レッスンを受講することをお勧めします。
SAJのバッジテスト2級、1級、SIAのブロンズ、シルバーメダルを目指すレベルの方であれば、どこのスクールのどのイントラの方でもしっかりと教えていただけると思います。
レッスンから選ぶ
アルペンのレースで早く滑りたい、検定に合格したい、コブを滑れるようになりたい、など目標がはっきりしている場合は、スクールが行っている特別レッスンがお勧めです。
アルペンの場合はポールバーンが必要となるので、場所は限られていますが、常時レッスンを行っているスクールがあります。
検定対策レッスンは、各スクールで不定期に行われている場合が多く、各スクールのホームページをこまめにチェックすることが必要です。
もし検定を受けたいスキー場が決まっているのであれば、そのスキー場にあるスクールで受講すると、検定斜面を教えてもらえるので合格に少し近づきます。
コブを滑れるようになりたい方は、コブ専門、あるいはコブコース常設のスクールがお勧めです。
コブの指導は、整地種目以上にスクール、イントラの個性がでます。
全国のコブ専用スクール、レッスンをまとめてありますのでどうぞ。
2022/2023 コブ専門 スキースクール はこちら
イントラから選ぶ
元選手あるいは指導で実績のあるイントラは、特別レッスンを行っています。
ほとんどの場合、レッスンは先着順なので、お目当てのイントラがいれば、レッスン情報をこまめにチェックすることで受講することが可能です。
デモンストレーターの場合、所属するスキースクールがあるスキー場以外でもレッスンを行うことがあります。
スクールの常設レッスンではイントラを選ぶことができません。
しかし、もしレッスンで素晴らしいイントラに出会ったのであれば、その方のプライベートレッスンを受講することが可能です。
1人だと高くつきますが、3人ぐらいの仲間を見つけて受講すれば、常設レッスンとそこまで変わらない値段になります。
イントラの探し方
イントラはどんな人?
自分にあった方を見つけるにあたり、始めにどのような方がイントラをしているかをご紹介します。
専業のイントラはほぼおらず、本業が別にあり、冬の間だけ、あるいは週末だけイントラを行っている方がほとんどです。
昔はスキー場の地元の農家の方や宿泊施設の方が多くいましたが、今はサラリーマンの方も増えてきました。
デモンストレータでも、大半の方は別の本業があります。
なので、もしレッスンで担当となったイントラが他の仕事をしていたとしても、能力的に劣っているというわけではありません。
雪の降る期間が限られている日本では、イントラだけでは生活ができないのです。
現・元SAJ強化指定選手
アルペン、モーグル、スノーボードなど、オリンピックやワールドカップ、あるいはその下部大会に出場する人の多くは、SAJ(公益財団法人全日本スキー連盟)の強化指定選手に指定されています。
コーチの契約、練習環境の準備、移動手段などはSAJが手配しています。
現役
通常は一般の方にレッスンを行うことはありませんが、たまに競技シーズン終了後のスポンサー主催のキャンプなどで模範滑走やワンポイントレッスンなどを行うことはあります。
画面越しではなく、トップ選手の生の滑りを見ることは良い刺激になります。
引退後
競技生活引退後、スクールに所属、あるいは自身のスクールを立ち上げ、レッスンを行う方もおられます。
個人の名前で集客力があるので、その方の名を冠した特別レッスンをメインで行う場合が多いようです。
立場としては、次にあげるスクールのイントラと同じです。
スクールのイントラ
勤務形態として、ひとシーズン通して勤務する常勤と、週末など繁忙期のみ勤務する非常勤のイントラがいます。
非常勤には一般企業に勤めながら週末のみ勤務する方や、学生アルバイトがいます。
現・元SAJ/SIAデモンストレーターなど有名な方は特別レッスンを行う場合が多く、スクールの常設レッスンは、イントラがローテーションで担当します。
常設レッスンを誰が担当するかは、そのスクールの方針ですが、クラスのレベルにあった確かな技量をお持ちの方が担当されます。
某スクールでは、運が良いと現役のナショナルデモンストレーターが、常設レッスンを担当することもあります。
スキー・スノーボード仲間
スキー・スノーボードを教えることに資格は必要ありません。
知り合いに上手な方がいれば、その人に教えてもらうのは普通のことですよね。
上達の過程で苦労したポイントが同じ場合もあり、自分にあったヒントをもらえる可能性もあります。
スキー・スノーボードクラブの指導員には経験豊富な方もおられ、スクールのイントラと同等の指導を受けられることもあります。
イントラに求められる能力
自分に合ったイントラを探すうえで、私の考える重要な3点「技術力」、「指導力」、「心(熱意)」を共有します。
技術力
イントラは技術力が高いにこしたことはありませんが、常に最高の滑りをすれ良いわけではなりません。
指導内容にあった滑りを見せる必要があります。
最高の滑りを見せる
生徒がオリンピック選手の滑りを見たとします。
全員がすごいと思います。
しかし、残念ながら自分の滑りとかけ離れていた場合、技術力の向上には役立ちません。
生徒の技術力の少し上の滑りを見せる
多くの先生が行う模範滑走です。
生徒に出している課題が解決した時の滑りを見せます。
この滑り方を見せることが、ビデオなどとの一番大きな違いになります。
課題と同じ滑りを見せる
自分の滑りを常にビデオで撮影しているわけではないので、自分がどのような滑りをしているか気が付いていない場合が多く見受けれます。
イントラは生徒の滑りを体現し、そして次のステップの滑りを見せることが重要であると思います。
最近はビデオ(モバイル)撮影を取り入れているレッスンも多く、この技術の重要性は減少しています。
指導力
イントラが必ずしも生徒よりうまく滑れる必要はありません。
WTAダブルス 元世界ランキングで1位の杉山愛選手のコーチは、一時期、プロテニスプレーヤー経験の無い実のお母さんでした。
また、どの競技でもコーチより現役の選手の方が上手い場合がほとんどです。
では指導にはどのような力が必要なのでしょうか。
私は、「課題を見つける力」、「原因を見つける力」、「矯正方法を見つける力」の三つの力が必要だと考えています。
課題を見つける力
生徒の滑りをみて、上達するための課題をみつける力です。
例えば、コブを乗り越える時に後傾になっている、といったことです。
課題は誰からみても明らかな場合が多いので、自分でも見つけることができることもあり、ましてや指導経験豊富な方であれば直ぐに見つけられます。
原因を見つける力
次に、課題に対してその原因を見つけ出す必要があります。
例えば、コブを乗り越える時に後傾になる原因として、腰が引ける、あるいは足首がゆるみ板が前にすすむ、などがあげられます。
ビデオなどをコマ送りで見れば自分でも分かる場合があります。
滑走している生徒をみて原因をみつけるには、経験が必要です。
矯正方法を見つける力
イントラにとって一番重要なことは、生徒の技術を伸ばすこと、だと思います。
原因を見つけるまでは、比較的多くの人ができるのですが、長年しみ込んだ癖(欠点)を矯正することは一朝一夕にできることではありません。
生徒の特徴を把握し、最適な矯正方法を伝えることが大変重要になってきます。
そのためには、イントラも指導力を鍛える必要があり、その結果が評判となって現れます。
心(熱意)
武術の上達には「心技体」が必要と言われます。
その中で、「心」は一番初めにくる言葉、すなわち一番重要と考えられていることです。
イントラとして重要なことは生徒を上達させたいと思う気持ちを強く持つことだと思います。
そうすれば、個々の生徒の特徴を把握し、だんだんと適切な指導をできるようになり、そして指導力が向上します。
イントラと接していれば、心(熱意)は伝わってくると思います。
イントラの探し方
ここまで、いろいろな観点を共有してきましたが、私の考える一番重要なことはイントラの技術レベルではく、「心(熱意)」だと思っています。
正確に数えたことはありませんが、私は今までデモンストレーターだけで10名以上、合計30人以上のイントラに延べ数百日のレッスンを受けてきました。
みなさん、素晴らしい方ばかりですが、その中で特に一人の方が印象に残っています。
指導力が素晴らしく、私のできなかったことに対する矯正方法を的確に教えてくれました。
親しくなった後にこっそり教えてくれたのは、その方は独自の指導マニュアルを作成されていて、初心者から技術戦の県代表クラスまで、種目毎の技術指導の順番、陥りやすいミスのパターンとその矯正方法を書き記しているとのことでした。
スキー技術もデモになるほど高いのですが、それよりもその指導に対する熱意に感服しました。
フィーリング
ここまでいろいろなことを書いてきましたが、イントラを選ぶうえでもう一つ重要なことがあります。
それはフィーリングです。
どんなに素晴らしいイントラでもすべての人に合うわけではありません。
十分にイントラと話し合ったうえで、最後は自分のフィーリング(感性)を信じましょう。
最後に
ここまでイントラの選び方を書いてきましたが、上達において「浮気」も重要な要素かもしれません。
信じれるイントラが見つかったならば、その方についていくべきですが、どうしても行き詰りが発生する時があると思います。
その時は、他の方の指導を受けたり、感覚を聞くことで局面が打開できるかもしれません。
そこを乗り越えたら、また元のイントラに戻ればよいのです。
他の方の指導を受けるとへそを曲げる方がいますが、それはそれで良い潮時なのかもしれません。
コブの滑り方のまとめ はこちら
スキー 小回りの滑り方のまとめ はこちら
SAJ、SIAスキー検定(バッジテスト)のまとめ はこちら
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